相続が発生する前に検討すべき事項は、「遺言書の作成」と「生前贈与」についてです。
前回は遺言書の記載方法についてご紹介しました。
今回は「生前贈与」とそれに伴う「贈与税」について見ていきましょう。
贈与とは
財産を他人に無償で譲り渡すことを贈与といいます。
贈与には相手の承諾や管理能力が必要となるため、
相手が小学生以下などの場合、贈与としては認められません。
もし幼い子に贈与をしたい場合は、
その子の親権者が「法定代理人」として受託すれば贈与は成立します。
預貯金や株式等の財産を譲り渡した場合だけでなく、
以下の場合も贈与となるため注意が必要です。
- 親などから借金返済を免除してもらった、借金について返済の実績がない
→免除金額、または借入金そのものが贈与となる - 保険料を負担していない人が保険金を受け取った
→保険料負担者から受け取った人への贈与となる - 時価よりも著しく低い金額で財産を譲り受けた
→時価との差額が贈与となる - 親などが所有する不動産の名義を無償で子や孫に変更した
→不動産の価格が贈与となる
贈与税について
贈与によって財産を取得した人は贈与税を納めなければなりません。
贈与税は、暦年課税といって1年ごとの贈与に対して課税されます。
ただし、110万円の基礎控除が設けられており、
1年間に行われた贈与の額が110万円以下であれば贈与税がかかりません。
- 贈与税の計算
その年に受けた贈与金額 ー 110万円(基礎控除) = 課税価格
課税価格 × 税率 ー 控除額 = 贈与税額
贈与税の税率は、贈与の額が多くなればなるほど税額も高くなる超過累進課税をとっています。
税率は基本となる「一般税率」のほか、
父母や祖父母による20歳以上(令和4年4月から18歳以上)の子や孫への
贈与税を優遇する「特例税率」が設けられています。
生前贈与
相続税を軽減する対策として生前贈与を活用する方法があります。
生前贈与とは、生きているうちに出来るだけ財産を将来の相続人などに譲り渡し、
相続時の財産を減らすというものです。
基礎控除を大きく超える金額を一度に贈与しても、贈与税負担が重くなってしまい、
生前贈与する意味がなくなってしまいます。
財産を少しずつ(110万円の基礎控除以下)贈与したり、贈与税の特例を活用したり等、
贈与の仕方を工夫すれば一定の節税が可能です。
例えば1,100万円を子(20歳以上)に贈与するとします。
年に110万円ずつ10年かけて贈与すれば、1,100万円を非課税で贈与出来ることになります。
今回の場合、本来であればまとめて1,100万円を贈与すると贈与税が207万円かかりますが、
10年かけて贈与を行うことで贈与税207万円の節税になるのです。
そして、その分相続財産を減らせることにもなります。
生前贈与のポイント
①早めに対策を始める
相続人が亡くなる3年以内に行った贈与は、相続財産に加えることになります。
出来るだけ早い時期から生前贈与対策を始めると良いでしょう。
※令和5年度の税制改正で3年以内から7年以内に拡大することとなりました。
詳しくはこちらをご覧ください。 → 意外と身近な相続税について知ろう!
②贈与の証拠を残す
現金の贈与は、本当に贈与が行われたかどうか証明が出来ません。
銀行振込にする、贈与契約書を作成する等で証拠を残しましょう。
③相手の承諾など贈与の実態が必要
内緒でお金を積み立てていたり、印鑑や通帳を贈与者が管理している場合、
たとえ相手の名義となっていても贈与と認めらません。
税務調査により、名義預金として申告漏れを指摘されることが多々あります。
贈与を受ける人が預貯金通帳や印鑑を管理し、実際に使っている状態であることが必要です。
終わりに
今回は贈与税と生前贈与についてご紹介しました。
次回は、今回の内容と併せて知っておきたい贈与税の特例についてご紹介します。
※可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、誤った情報や古い情報が入り込んでいる可能性がございます。詳しくは税理士などの専門家にご相談ください。